がん治療による脱毛とその影響 |
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「抗がん剤治療」による脱毛 |
抗がん剤の種類や使用量などによっては、全身の体毛(髪、まゆ毛、まつ毛、陰毛、鼻毛など)に影響することがあります。一般的に、抗がん剤を投与してから約2〜3週間後に髪の毛が抜け始めます。脱毛は一時的なもので、治療終了後6か月くらい(早い人では2〜4か月くらい)経過すると再び生えてきます(生え始めはうぶ毛のような髪の毛です)。8か月〜1年程度でほぼ回復します。 |
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「放射線治療」による脱毛 |
放射線が当たる範囲だけに起こります(例えば、胸に放射線を当てた場合、胸毛は抜けますが、髪の毛は抜けません)。身体を通り抜ける種類の放射線では、照射した部分の反対側の部分にも影響が出ることもあります。脱毛の程度は、放射線の強さ、当てる方向、当たる範囲、患者さんの身体の状態などによって異なります。放射線治療を開始してからおよそ2〜3週間後に毛は抜け始めます。ごく稀に永久脱毛になる場合がありますが、一般的には治療の終了後3〜6か月くらい経過すると、再び生えてきます。6ヶ月〜1年程度でほぼ回復します。 |
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主な抗がん剤の種類と脱毛の程度 | 主な放射線の照射範囲と脱毛部位 |
抗がん剤の種類や投与量によって、脱毛の程度は異なります。さらに同じ薬でも脱毛、発毛の程度やスピードには個人差があります。下記の表では、脱毛が起こる程度を高度、中等度、軽度に分類しました。
 | 放射線の強さ、方向、範囲によって、脱毛の程度は異なります。さらに、身体を通り抜ける種類の放射線では、照射した部分の反対側の範囲にも影響がでることがあります。また、脱毛・発毛の程度やスピードには個人差があり、一律ではありません。
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脱毛が及ぼす影響 |
●こころ
外見のイメージが変わることでショックを受ける。外見の変化によって、他人にがんであることを悟られるという不安が出てくる。
●髪の毛
外傷を受けやすくなる。紫外線や寒さの刺激を受けやすくなる。
●眉毛
汗が直接目に入りやすくなる。
●まつ毛
目にゴミが入りやすくなる。途中で切れてチクチクとした痛みを感じることも。
●鼻毛
鼻からほこりが入りやすくなる。乾燥しやすくなる。
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治療を受ける前の準備とかつらについて |
●爪を短く切りましょう
髪を洗う時など、爪で頭皮を傷つけないように、爪は短く切りましょう。
●髪を短く切りましょう
髪を短くしておくと、抜け毛の量が少なく感じられますし、ケアも簡単です。ただし、長い髪のかつらを用意した方は、治療前に髪を切ると見た目の変化が大きくなるので、短い時期は帽子をかぶるなどの工夫が必要です。放射線治療の場合は頭部に放射線を当てる場合のみ適応。
●パーマ、ヘアカラー、育毛剤はやめましょう
パーマやヘアカラーは刺激になります。また、育毛剤は髪がないと効果はありません。
治療が終わり、また髪が生えてきた時に楽しみましょう。
●おしゃれ情報を集めましょう
外見が変化することで受ける精神的ダメージをやわらげ、乗り越えていくために、かつらや帽子、バンダナ、付け毛などの情報を集め、工夫して過ごしましょう。
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かつらの準備と時期 |
一般的に、抗がん剤治療を開始してからおよそ2〜3週間後に毛は抜け始めます。脱毛がおこってから準備をしては、あせりやいらだちのもとにもなります。事前に準備することで 余計なストレスをなくし前向きに治療に専念できます。脱毛が予想される1か月前ぐらいににはご購入されることをお勧めします。
かつらには、さまざまな種類があります。フルウィッグ(全かつら)には大きく分けて、ファッション用ウィッグと医療用ウィッグがあります。医療用ウィッグは、自然さ、快適性、通気性、使いやすさなど患者さんの事情に配慮した工夫がされているウィッグです。ファション用ウィッグは医療用ウィッグと比べると目が粗く頭皮に刺激を感じることがあります。医療用としての使用は適切ではありません。治療の際に使用するかつらは医療用のものを使用するようにしましょう。 |
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脱毛が始まってからのケア |
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ヘアケア |
●洗い方(頭皮を清潔に)
毛が抜けることを気にして、洗髪をためらうことがあるかもしれませんが、不潔な状態でいると毛穴が詰まったり、皮膚炎が起こったりすることもあります。頭皮は清潔にしておくことが大切です。
・シャンプーは刺激の少ない弱酸性のものを選びましょう。
・シャンプーが地肌に残らないように、よく洗い流しましょう。
・爪を立てずに指の腹でやさしくゆっくり洗いましょう。
・お湯はぬるま湯にしましょう。
・リンスやトリートメントは、毛先に少量つけるようにしましょう。
●乾かし方(やさしく)
洗髪後はタオルでゴシゴシこするのではなく、水分を吸収させる感じで抑えるようにやさしくタオルをあてましょう。ドライヤーの使用はできるだけ控え、使用する時は低温、弱風にしましょう。
●とかし方(やさしく、ゆっくりと)
ブラッシングは、頭皮を刺激しないようにやさしくゆっくり行いましょう。ブラシは目が粗く(ピンの数が少ないもの)、ピンが柔らかく、先が丸くなっていると、髪や頭皮への抵抗がより少なくて良いでしょう。中にはピンの台がクッションになっているタイプもあります。
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◎皮膚の炎症症状
放射線治療により、皮膚に炎症症状(赤み、腫れなど)がある場合は、ブラシを使って髪をとかすのはやめましょう(放射線が当たっていないところはブラシでとかしても大丈夫です)。
◎放射線治療にともなうスキンケアについて
放射線治療を行った部分には、体毛の脱毛のほか、日焼けのような皮膚の炎症が起こっている場合があります。炎症が起こっている部分の皮膚は石けんを使用したり、皮膚をゴシゴシこするような洗い方はやめ、お湯をかけながら指でやさしくなでるようにしましょう。また、クリームなどの使用については主治医と相談してください。
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家での工夫 |
家の中にいる時でもスカーフやバンダナ、フィットキャップをかぶっていると、髪の毛が床に落ちにくくなります。また、就寝時にも睡眠を妨げないようなフィットキャップやナイトキャップをかぶると、髪の毛が寝具に付着しにくくなり良いでしょう。
フィットキャップ・ナイトキャップ
やわらかい素材でできていて、室内でも利用できます。また、枕に当たるところの縫い目をなくしたり、汗の吸収や伸縮性に優れるなどの工夫がなされています。 |
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外出時の工夫 |
外出時にかつらや帽子などをかぶると、外見的なカバーだけでなく、寒さによる刺激や紫外線などから頭皮を保護することもできます。まつ毛が抜けている場合は、目にほこりなどが入るのを防ぐために、サングラスやメガネをかけるのも1つの方法です。鼻毛が抜けている場合は、マスクをして乾燥やほこりを防ぎましょう。 |
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◎まつ毛による目の痛みを感じたら
まつ毛が途中で切れてしまい、チクチクするような痛みを感じた場合、そのままにしておくと結膜炎などを引き起こす可能性があります。痛みが続くようであれば、眼科を受診しましょう。 |